So-net無料ブログ作成
20世紀の歌Ⅱ ブログトップ
前の20件 | -

Today [私の好きな20世紀の唄たち] vol.62 [20世紀の歌Ⅱ]

Today
written by Randy Sparks

Randy Sparks
001RandySparks.jpg
私がこの曲を知ったのは、ジョン・デンバー の75年のライブ・アルバム "An Evening with John Denver" であった。当時人気絶頂だったジョンの油の乗り切った演奏の中でしっとりと歌われていた。オリジナルは60年代に一世を風靡したフォークグループ "The New Christy Minstrels" の64年のアルバムだったようだ("Green Green" が大ヒットした)。このグループは常時10人ぐらいの編成で現在まで続いているらしく、ジョンも在籍したことがあったのかなと思っていたが、違っていた(ジョンのいたのは "The Chad Mitchell Trio" )。
John Denver with The Mitchell Trio
003chad.jpg
余談になるが、ニュー・クリスティー・ミンストレルズは結成以来のメンバーが通算300人以上になっていて、その中には Kenny Rogers, Kim Carnes, Gene Clark, Jim McGuinn (later known as Roger) など名だたるミュージシャンがいて驚いた。メジャーに上がる登竜門的なバンドだったんだろうか。そのリーダーが今回の曲の作者であるランディ・スパークスである。
The New Christy Minstrels
002new.jpg
物語の主人公は放浪する詩人(作者自身か)であり、恋人と過ごしている現在(いま)だけが最上のものであり、過去の栄光も未来のことも意味がないと歌っている。官能的で刹那的な内容であるということもできる。同じような趣旨の歌に Kris Kristoffersonの70年作の "Help Me Make It Through the Night" があるが、既成の価値観に対するアンチ・テーゼとして作られた歌だということもできるだろう。信じられるものはただ自分の手ざわりのある瞬間々々だけであるというように。

さて、当時反抗する世代だった若者達は、40年後の今どんな人生観を持って生きているのだろう。大人になるにつれて世知を身に付け、うまく立ち回る日々を送っているのだろうか。逆にいつまでたっても自分が自分が、という生き方しかできずにいるのだろうか。今さらこの歌の時代に立ち返ることはできないが、そんなことをつい考えてしまう歌でもあるなあ。
004john.jpg
youtube は上記の二人のものを。
Today-John Denver
https://www.youtube.com/watch?v=uBGjZAYcJqc
NEW CHRISTY MINSTRELS - Today (1964) HQ Stereo!
https://www.youtube.com/watch?v=3cELsUMcQdc

今日この日 (大意。原詩は検索してみて下さい。)

**
今日のこの日、まだ花が蔓から落ちてしまう前に
僕は君の果実を食べ味わい、君の甘美なワインを飲もう
幾千万の明日が過ぎ去って行こうとも
僕はこの日手にした至上の喜びを決して忘れない

僕は洒落者にもなろう、放浪者にもなろう
君は僕の事を僕の歌う歌で知るだろう
君の食卓で大いに宴を持ち、君の褥で眠る
どんな明日がやってくるかなんて誰が気にするものか

僕は昨日までの栄光に満足することなんてできないし
冬が去り春がやってくることを糧に生きていくこともできないさ
今日のこの一瞬だけが僕の時、現在だけが僕の物語
僕は笑い、泣き、そして歌うのさ


EXCITING NEW FOLK CHORUS IN PERSON


An Evening With John Denver


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

We're All Alone(みんな一人ぼっち)[私の好きな20世紀の唄たち] vol.61 [20世紀の歌Ⅱ]

We're All Alone(みんな一人ぼっち)
       written by Boz Scaggs
001.jpg
この歌を初めて聴いたのは前回も取り上げた77年のリタ・クーリッジのアルバムだった。なんか少ない音源から取り上げてるんだなあ、との顰も聞こえてくるようにも思うが、プアな音楽履歴でしかないのは事実なので致し方ないか。まあ別の視点で言うと、リタやリンダなどSSWではないシンガー達は、古今の名曲たちを掘り出してきて精選し、自分のアルバムに取り込んでいるので、当然といえば当然だと言えるかもしれない。作者のボズ・スキャッグスは言わずと知れた"AOR"(Adult-Oriented Rock。日本だけの呼称らしいが)の旗手。それほどよく聴いたわけではないが(笑)。
002.jpg
リタのアルバムで聴いていた時、邦題が「みんなひとりぼっち」となっていたので、ろくに歌詞を確かめもせず、「人間は本来孤独な存在である」というような哲学的な内容なのかな、とぼんやり思っていて、そんな気分で聴いていたように思う。何年か経ってから英語に詳しい知人から「二人っきり」という意味なんだと教えてもらった。"All" という語が "Alone" を強調する意味になるのだそうだ。そうすると恋人達が周囲から隔絶された部屋にいて愛を語り合っているという歌になるなあ、とも思った。でもネイティブではない自分の語感からすると、二人であっても周囲から隔絶された「孤独」なイメージは残るなあとも思っていた。
003.jpg
今回これを取り上げるにあたって改めて調べてみると、ボズが76年に出した "Silk Degrees" に入っていたこの曲の邦題は「二人だけ」だったそうだ。リタのアルバムの日本盤製作者が誤訳したのか、それとも当時の「キャッチーな邦題のつけ方」の原則に従っただけなのだろうか。

後年アンジェラ・アキが自分のアルバムの中でこの曲を日本語で歌っていて、それは訳詩ではなく作詞と言っていいものだが、「人は皆孤独だ」という解釈から作られているようだ。幼少期を日本で過ごした彼女は英語ネイティブとは言えないようなので、日本人に近い受け止め方をしたのかもしれない。
004.jpg
なお、wiki によると2007年に出された再発盤のライナー・ノーツで、ボズ自身が「この曲のタイトルを個人的な話と普遍的なテーマを両立させるものとしたが、両者の意味が同時に成立するような歌詞にするのに苦労した」と書いているようだ。いい歌というのは個人的でありながら普遍性も併せ持っているのだなあ、と改めて感心させられたのであったよ。

youtubeはまずリタのもの。
Rita Coolidge - We're All Alone (1978) HD 0815007
https://www.youtube.com/watch?v=OvNdPewuXAQ
次いでご本家ボズのもの。
Boz Scaggs - We're All Alone (HQ)
https://www.youtube.com/watch?v=k-MsVZrTQEU
リタのジャズアレンジのもの。2005年ごろか。
Rita Coolidge Live - Boz Scagg's We're All Alone
https://www.youtube.com/watch?v=xFhRgEzkXtA
アンジェラ・アキの日本語詞(訳詩ではない)のもの。
We're all alone - Angela Aki
https://www.youtube.com/watch?v=jG5e42WXUcI

005.jpg

みんな一人ぼっち(二人きり) (大意。原詩は検索してみてください。)

窓の外では雨が降り出して
止みそうにもない気配だ
もう泣くのはお止し
海辺に佇んでいると
夢が二人を遠い大海原に連れ出してくれるから
ずっとずっと先の方まで

目を閉じてごらん、愛する人
僕と一緒に居られるよ
波の下をくぐって
長く忘れられていた
時の洞穴を通り抜けて
僕らは今二人っきり

窓を閉めて
灯りを暗くしておくれ
それでもう大丈夫
何も思い悩むことはないさ
全てから解き放たれ、また全てが始まる
それにただ身をまかせて
今が幸せというように自分をつくっていこう

物語が始まると
必ずいつかは古びてしまう
バラも恋人たちも
だから今までの歳月をすべて
風の中に投げ捨てて
ただ僕を抱きしめて

窓を閉めて
灯りを暗くしておくれ
それでもう大丈夫
もう思い煩う必要はないさ
全てから解き放たれ、また全てが始まる
それにただ身をまかせて
今や全てが忘れ去られ
僕たちはただ孤独の中にいるんだ

シルク・ディグリーズ(期間生産限定盤)


Anytime Anywhere & Love Me Again


ANSWER<通常盤>


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

もう話したくない(I Don't Want To Talk About It)[私の好きな20世紀の唄たち] vol.60 [20世紀の歌Ⅱ]

I Don't Want To Talk About It (もう話したくない)
          written by Danny Whitten

ロッドに2003年に見出されこの曲をデュエットしてスターダムに上ったという
Amy Belle。
001.jpg
私がこの歌を初めて聴いたのは、77年に出たリタ・クーリッジのアルバムであった。
002.jpg
その後でロッド・スチュアートの75年のアルバムに入っていたのを聴いたのかな。そのあたりの記憶は定かでないが、今回改めて調べてみると、作者のダニー・ウィッテンはニール・ヤングのバックバンドでもある "CRAZY HORSE" の初期のメンバーだったらしく、71年にこの歌の入ったアルバムが出されている。
003.jpg
多くのシンガーによってカヴァーされているこの歌の作者だから、さぞかし印税もたくさん入っているだろうなどと下卑たことを考えながら調べていると、ダニーは43年生まれで、72年に29歳で亡くなったらしい。死因はヘロイン中毒。有能なミュージシャンが奇しくも27歳で亡くなるという「27クラブ(The 27 Club)」については、映画『AMY エイミー』の感想の中でも触れたが、彼もその一員になってもいいくらいの才能を持っていた人だったようだ。ニール・ヤングも彼を惜しむ言葉を述べている。生きていたらどんなに多くの佳曲を書いていただろう、とその早すぎる死が惜しまれる。
Danny & Neil
004.jpg
曲の内容は、愛する人と破局を迎える時にあたって、「もう何もそのことについて話したくない」という気持ちと、「どんなにか君を愛していたのに愛を失って傷ついている」ことを訴えたいという、アンビバレントな気持ちを歌ったものである。シンプルな歌詞であるが、逆にそうだからこそ美しいメロディとあいまって、多くの人の心を打つのかもしれない。ロッドのコンサートではリフレインを観客が大合唱する様子が見られる。一方ダニーの youtube を見ると「ロッドには歌って欲しくなかった。」というコメントもあって面白い。ロッドはモテ男だからね。
Rod & Amy
005.jpg
余談だが、この曲をブルーグラスにアレンジして、80年ごろ自分のバンドで歌っていた(今でも歌っているが)。その頃は他ジャンルの曲をブルーグラスにアレンジして歌うのをよしとする観念にとらわれていたこともあって(先輩バンド "Bluegrass 45" の影響?)、他にも何曲かそういうアレンジを試みていた。当時の宝塚フェスでの音源があったので紹介しておく。

ミスもあるのはフェスでの一回きりの演奏なので仕方がないがご容赦を。声は明らかに若いなあ。ずっと演奏していたので、この曲というとブルーグラス・ヴァージョンしか考えられなくなっていたが、また原曲に立ち返って歌ってみようかな、と思う今日この頃である。

最後に主だったミュージシャンのレコーディングを参考までに時系列的に並べておく。

1971 "Crazy Horse" Crazy Horse
1974 "Some Days You Eat the Bear" Ian Matthews
1975 "Atlantic Crossing" Rod Stewart
1977 "Anytime...Anywhere" Rita Coolidge
2009 "Lost In The Shortcut" Amy Belle

youtube は以下のものを
Danny Whitten - I Don't Want to Talk About It
https://www.youtube.com/watch?v=wISNCbuLm5Q
Rod Stewart I Don't Want To Talk About It
https://www.youtube.com/watch?v=MjxL3U2mCyg
Rita Coolidge I Don't Want To Talk About It
https://www.youtube.com/watch?v=DtnW4_kMcPc
Amy Belle I Don't Want To Talk About It
https://www.youtube.com/watch?v=owXb8Pqc0tE


もう話したくない(大意。原詩は検索してみてください。)

君の目を見ればわかるさ 
君が今までずっと泣き続けていたんだってことは
空に輝く星たちも君にはなんの意味もないさ 
星たちは君の心を映す鏡にすぎないから

**
そのことについてはもう話したくないんだ 
どれだけ君が僕の心をズタズタにしたかってことは
僕がもう少しだけここに残っていられるのなら
僕が残っていられたら この心の叫びを聞いてほしい
僕の心の声を

僕が独りぼっちになって立ちすくんでいたら
影は僕の様々な心の色を隠してくれるだろうか
青は涙の色を、黒は夜の畏れの色を…
空に輝く星たちも君にはなんの意味もないさ 
星たちは君の心を映す鏡にすぎないから

**
そのことについてはもう話したくないんだ 
どれだけ君が僕の心を傷つけてしまったのかってことは
僕がもう少しだけここに残っていられるのなら
僕が残っていられたら この心の叫びを聞いてほしい
僕の心の声を…


Crazy Horse


Atlantic Crossing


Anytime Anywhere & Love Me Again


Lost in the Shortcut


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

Summer Wages(夏の給料) [私の好きな20世紀の唄たち]vol.59 [20世紀の歌Ⅱ]

001.jpg
Summer Wages(夏の給料)
Written by Ian Tyson

暑い夏に突入したので夏の歌を、といっても題名に "Summer" がついているというだけなのだが(笑)。イアンとシルビアの71年のアルバム "Ian & Sylvia" に入っているこの歌を初めて聴いたのは学生の頃だっただろうか。ブルーグラスの75年の名盤 "J.D. Crowe And the New South" (日本盤では "Old Home Place" )にも入っていて、当時よく聴いたが、どちらが先だったのかはよく覚えていない。どちらのLPも貧しい学生時代だったにも関わらず買っていたのにはびっくり。イアンとシルビアは名前だけ知っていたのに音源は手に入らず、珍しく日本盤で出たので買ったのだろう。

聴いてみるとフォークというイメージからは遠く、カントリー(ロック)のサウンドだったので、はじめはちょっとがっかりしていたような気がする。トニー・ライスのしっとりとしたリズムと歌いぶりと、イアンのややアップテンポなサウンドのどちらもいいのだが、自分で歌おうとするとどちらにしようかと迷って現在に至っている。
002.jpg
あとナンシー・グリフィスの「遠い声」シリーズでも取り上げられていたので、評価を新たにしたというのもあった。あの2枚のアルバムは「ナンシーが選んだ」というのでもう一度原曲を聴くという風に、私にとってのバイブルでもあるのだったよ。
003.jpg
さて歌の内容であるが、題名は訳すと「夏の給料」というおよそ歌の題材になりそうにないものである。夏の給料は海山に遊びに行ったり、飲んだり食べたりで浪費し、すっからかんになってしまうというのは分からないでもないが、ちょっと日本人の感性にはない発想のように思われる。"Wage" はサラリーと違って日雇いの賃金というニュアンスが強いので、「その日暮し」のイメージがより強いのかもしれない。イアンはユーモアも交えて、「人生はギャンブルのようなもので、欲をかいて分不相応な賭けに出ると、全てを失うことになる」と警告している。
004.jpg
バンクーバーも都会だと思うが、カナダの人々にとってはトロントあたりの方が大都会と感じるのだろうか。愛する彼女をバンクーバーに残して都会に出て一旗あげようとしたが、うまくいかず、失意の中彼女のいる故郷に帰ろうとしている。だがその彼女も自分を待つことなく、他の男の元に去っていってしまっているだろう。自分に残っているのは素晴らしい女性だった彼女との思い出だけだ…。

youtubeは話題にした三つを
Summer Wages : J.D. Crowe And The New South
https://www.youtube.com/watch?v=e97jkyXjpSs
Summer Wages / Ian and Sylvia
https://www.youtube.com/watch?v=kXyjv9VlgPo
Nanci Griffith & Tom Russell - "Summer Wages"
https://www.youtube.com/watch?v=tMizaxpZrTk

Summer Wages [夏の給料](大意。原詩は検索してみてください。)

ディーラーと勝負している時は17でカードを引いちゃダメだ
お前にオッズが上積みされないことは分かっているだろう
お前のダチたちが彼女を狙っている時に
お前の彼女を一人で放っておいちゃダメだ
歳月は夏の給料みたいに賭けられ失われていくのさ

俺たちはバンクーバーに行き着くまでフラフラうろつきまわる
愛する彼女はあの街に住んでいる
彼女と別れてからもう六ヶ月かそれ以上になる
彼女もまた夏の給料のようにどこかへ去っていってしまうだろう

**
ビールを飲ませる居酒屋は大通りに立ち並び
季節の移ろいの中で見る夢は店の床にこぼれて消えていく
大きな木のカウンターもやがて朽ちていくのを待つだけで
ばくち打ち達がドアの傍で注意深くカモを探している

俺は滑りやすい都会の靴のまま引き舟に乗って働く
もうこんな仕事はやめようと思い決めたはずだったのに
灰色の霧が立ち込め大きな杉の木立が見つめる海峡を通り
俺は夏の給料みたいに遠いところに消え去るだろう

彼女は素敵な女だがまた探そうとは思っていない
二人の作った素晴らしい思い出が残っているから 
思い出は決して変わることなく俺の心の中にしまってある
俺は賭けを続け俺の夏の給料を使い果たしてしまう

歳月はは夏の給料みたいに賭けられ失われていくもの



遠い声II


J.D. Crowe & The New South


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Ol' '55 [私の好きな20世紀の唄たち]vol.58 [20世紀の歌Ⅱ]

Ol' '55(55年型のビュイック・ロードマスター)
written by Tom Waits
001.jpg
私がこの歌を初めて聴いたのはたぶん The Eagles の "On the Border"('74)だったろうと思うが、割と流して聴いていたのでそれほど印象は強くなかったように記憶している。むしろイギリスのフォークロックグループ Fairport Convention からソロになったIan Matthews の "Some Days You Eat The Bear And Some Days The Bear Eats You" ('74)(長い題名だが、名盤だと自分的には思っている)の方がよく聴いたので印象が強い。何しろ一曲目だったからCDをかけると真っ先に耳に飛び込んでくるものね(笑)。
002.jpg003.jpg
いずれにしても、いい曲だとは思いながら自分で歌おうとは思わなかったからか、トム・ウェイツというクレジットは認めていてもあまり気には留めていなかった(トムのものは "Closing Time"['73]所収)。"Wreck Of Old 97" という鉄道事故を歌った歌があったので、そんなものかなと思っていたがとんだ間違いであった(笑)。Ol' '55というのは55年型のビュイック・ロードマスターという車で、当時の彼の愛車だったようだ。アメリカンミュージックの系譜的に見ると、500 miles などの Train Song の系列になるのかなとも思われる。鉄道が衰退した後は、"Truck Drivin' Man"などの自動車に取って代わり、やがて "Silver Wings " などの飛行機が現れるという具合だろうか。
004.jpg
トムは高校を中退してピザ屋の店員として働きながら作詞作曲を始めたようだが、そんな彼の愛車は125ドル程度で買えるこれらの中古車だった。お金がなかったということもあっただろうが、彼は二十年近く前のこれらの車を愛した。まるで自分の分身ででもあるかのように。最新型の無機質な車と違ってどこか人間味のある「手ざわり」のようなものに愛着を感じるというのは何か分かるような気がする。前にイーグルスの「ならず者」について書いた時に、70年代は「個の時代・あるいは内向の時代」だと言ったが、極めて個人的な「手ざわり」のようなものから世界とのつながりを確かめたいという点で、「ならず者」とも共通する感性があるような気がする。

歌に出てくるフリーウェイも今のインターステートよりは「ルート66」のような少し古いけど手ざわりの感じられる道の方が相応しい。この歌をしっかり歌えるようにして、あの「ルート66」をのんびり走りながら口ずさんでみたいと思ったことだ。長い間心の片隅にこびりついていた歌だったが、最近FB上で話題になっていたので、取り上げてみようと思い立った。おかげでたまっていた心の澱が少し取り払われたような気がした。

youtubeは一番好きなイアンのものから
Ian Matthews - Ol 55
https://www.youtube.com/watch?v=iQKia76QGYU
Tom Waits Ol '55
https://www.youtube.com/watch?v=PejBkU4-1fk
The Eagles - Ol' 55
https://www.youtube.com/watch?v=ba7iCo6CQwM

Ol' '55 (大意。原詩は検索してみてください)

時間があっという間に過ぎて
俺は急いで愛車 ol' 55 に乗り込んだ
車が走り出す時とても神聖な気分になり
生きているという実感が湧いてくる

**
今まさに日が昇ろうとして
俺は幸運の女神とともに車を走らせている
フリーウェイには車やトラックが集まり
星たちは次第に光を失っていく
俺はパレードの先頭を走りながら
もう少しこうしていたいと願う
この感情の高まりは俺にしか分からない

ふと気がつくとすっかり夜が明けてしまっていて
もう家に帰らなければならない
周りの車は俺を追い越し、トラックはパッシングしてくる
俺はお前のこの場所から家に向かって走る

車やトラックのひしめくフリーウェイを…
幸運の女神とともに…


Some Days You Eat The Bear - Factory Sample


Closing Time


On the Border


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

AGE [私の好きな20世紀の唄たち]vol.57 [20世紀の歌Ⅱ]

AGE
written by JAMES CROCE / INGRID CROCE
001.jpg
ジム・クロウチのことは前に "I Got A Name" を取り上げた時に書いたが、あの曲はジム自身の作ではなかったことは述べた通りである。今回取り上げた "AGE" という曲は妻でもあるイングリッドとの共作である。私がこの曲を初めて聴いたのは78年に出された "Mike Auldridge & 'Old Dog'" というブルーグラスのアルバムで、セルダム・シーンにも在籍していた Phil Rosenthal が歌っていたものであったと思う。そのアルバムでは他にもジムの曲 "Thursday"(作者は Sal Joseph ) を演奏していて、その辺りからジム自身のアルバムを聴くようになった。

この曲はジムの死の直後('73)に出されたアルバム "I Got A Name" に入っていたので、その少し前に作られたのかなと思っていたが、今回改めて調べてみると、68年に出された"Jim & Ingrid Croce" に入っていた。73年のものより素朴でフォーキーなサウンドである。
002.jpg
売れないフォークシンガーだったジムが、イングリッドという伴侶を得て、貧しくとも理想を追い求める人生を送ろう、と心に決めた様子が歌詞の端々からあふれ出ている。
003.jpg
70年代になって、音楽の盟友になる lead guitarist である Maury Muheleisen と出会い、次々とヒット作を生み出してゆく。そしてこれからという矢先の73年に飛行機事故で盟友とともに亡くなってしまうのだった…。

その後ブルーグラスバンドを始め、多くのミュージシャンによってカヴァーされるようになったこの曲("Right Back Where I Started Again"という題名の場合もあるようだ)であるが、ミュージシャンとしての自分を重ねることができるからかもしれない。二人がこの曲を作ったとき、よもや数年後全米No.1ヒットを出すとは思っていなかっただろうし、そのほうがこの曲の味わいもより深いものになるなあ、と思うのは私だけだろうか。
004.jpg


youtube は先ずジム夫妻のもの
Jim & Ingrid Croce Age
https://www.youtube.com/watch?v=K1OtgPiZJns
次に"I Got A Name"に入っているもの
https://www.youtube.com/watch?v=j5sO0HbB5WY
オマケに最近一人多重録音したものをこっそりw


AGE (大意。原詩は検索してみてください。)

良かったり悪かったりの人生を繰り返しながら
またこの場所に戻ってきた
いろんな所を渡り歩いたけど
何時どこにいたのかなんて忘れてしまった
壁にかかった時計だけが俺のボスだったし
たった一人の友達だったんだ
真の友なんて一人もいなかったのさ

***
愛と少しばかりのお金を交換して
大事な魂をはした金で切り売りしてきた
時の長いトンネルを潜り抜ける中で
理想だって失ったのさ
俺はようやく逆立ちしていた道から立ち直り
この場所に戻ってきたんだ
ここからもう一度自分の人生を
やり直すんだと気付いたのさ

100万ドル稼いだときもあったけど今では一文無しさ
今じゃそんな違いなんてどうでもいいと思えてきた
5セントしか稼いでない時も100万ドル稼いでいる時も
俺はいつも追い求めてきたんだ
決して失ってはいけないもの置き忘れたらいけないものを

人生の折り返し点に立って
今も頂点を目指して歩いているよ
道の途中でいろんなことを学びながらね
注意深く登っていくつもりさ
落っこちて傷つくことも多いからね
落ち込んだって誰も振り返ってなんかくれないさ


I Got a Name


nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Stray Dogs and Alley Cats[私の好きな20世紀の唄たち]vol.56 [20世紀の歌Ⅱ]

001.JPG
Stray Dogs and Alley Cats (迷い犬と路地裏の猫)
          written by Harley Allen

私がこの曲を知ったのはつい最近のことである。今一緒にユニットを組んでいるフィドラーのO氏が、いつもこちらが「こんな曲はどう?」と聞くと、いつも「いいよ」と言ってやってくれるのだが、珍しく「こんな曲はどう?」と言ってくれたので youtube で聴いてみると、なかなかしっとりとしたよい曲だったので、歌ってみようと思ったのが出会いである。
007.jpg
少し調べてみると、彼がブルーグラスの第一世代といってもいい(第二世代かも)レッド・アレンの息子だったことがわかり驚いた。初めはファミリーバンドの "Allen Brothers" でギター・マンドリンなどを弾いていたが、その後独立し、更にカントリー系のS&SWとして活躍するようになったようだ。全く知らないと思っていたが、実は少し前に紹介したルービン・ブラザースのトリビュートアルバム "Livin', Lovin', Losin' - Songs Of The Louvin Brothers" (2003)の中で "I Don't Believe You Met My Baby" を歌っていて、よく聴いていたということに今になって気がついた。
002.jpg003.jpg
更に驚いたのは、彼がすでに2011年に55歳の若さで亡くなっていたということで、出会ったと思ったときにはすでにこの世の人ではなかったというのがなんだか切ない気がした。同時代で同世代だった彼が、まだ元気でいるうちに出会っていたかったなあ、とわけもなく思ったのだった。
004.jpg
この曲は2001年に発表された "Live At The Bluebird Cafe" に入っているようなので、ぎりぎり「20世紀」に創られたのかもしれない(笑)。内容は、限りなく宗教歌から遠い宗教歌といっていいのかもしれない。子供の頃、母親の財布からお金をくすねてビリヤード場で遊んでいた男(自分も似たような少年期があったような)は、長じてからも決して敬虔なクリスチャンとは言えないような生活を送ってきたが、それでも死ぬときは天国の端っこぐらいには入れてもらえるかなあ、というようなものである。「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」という親鸞の言葉も連想してしまうと言ったら言いすぎだろうか。
006.jpg
今もよく歌っている Paul Craft の"Keep Me From Blowing Away" も「僕はクリスチャンじゃないけど、それでも神様、どうか僕が風に吹き飛ばされてしまわないように繋ぎ止めてください」と歌っている。苦しいときの神頼みと言ってしまえば実もふたもないが、何か日本人である私にも、自分を重ねることができるような気がして親しみを感じる。敢えて弁明っぽく言うと、「自分は今まで自分なりに正しいと思う生き方をしてきたけど、それは神の示す道と重なっているのかな」という自己確認の歌だともいえるのかもしれない。そのポールも14年に76歳で亡くなっているらしい。彼らは天国に行けたのだろうか。

そう長くはないだろう自分の残りの人生、これらの歌と大切に向き合っていきたいものだ、と少しだけ思ったことだ。

youtube はこの二つ。
Harley Allen, Stray Dogs and Alley Cats(亡くなる一年前の動画)
https://www.youtube.com/watch?v=Se-Yg-FvoMI
Lonesome River Band - Stray Dogs & Alley Cats
https://www.youtube.com/watch?v=Dmq7xs6CM3Y

迷い犬と路地裏の猫 (大意。原詩は検索してみてください。)

幼い頃毎日曜日ママが行く教会で
ママの財布からお金を少し抜き取ったものだ
ママがお祈りをしている間にこっそり抜け出して
ビリヤード場に行って一日中遊んでた
ぼくが家に帰るとママは頭を横に振って
「おまえは悪魔のベッドで枕をふくらませているんだよ」
ぼくはママに「ママの気持ちはわかっているよ」と言う
だってぼくは家の生活費ぐらいは自分で稼いでいたんだよ

**
天国に行くほど善人じゃないかも知れないけど地獄に行くほど悪いわけじゃない
自由に羽ばたける小さな羽のほうが大きな尻尾をもつよりましさ
神様の右側に座ろうなんて思いあがってはいないけど
天国のごみ箱を空にすることぐらいはできるさ
だから天国の黄金の街にも
ぼくのような迷い犬と路地裏の猫の居場所があればいいのに

もし正面の扉からぼくを入れてもらえないなら
たぶんぼくは裏口から入るよ
ぼくの浴びる光輪は明るくは光っていないかもしれない
でもその光は夜のうちにぼくを雲の中こっそり通らせてくれる

そしてぼくは自分がその栄光の歌を最後まで歌わなくてもかまわないし
もしぼくがとっても小さな羽を持っているなら
地上にいる小さな悪魔を見張っていて
そしてやつらが教会から逃げ出して行く時後をついて行くんだ

**
天国に行くほど善人じゃないかも知れないけど地獄に行くほど悪いわけじゃない
自由に羽ばたける小さな羽のほうが大きな尻尾をもつよりましさ
神様の右側に座ろうなんて思いあがってはいないけど
天国のごみ箱を空にすることぐらいはできるさ
だから天国の黄金の街にも
ぼくのような迷い犬と路地裏の猫の居場所があればいいのに
まるでぼくのように…


Live at the Bluebird


nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

I Don't Believe You've Met My Baby[私の好きな20世紀の唄たち]vol.55 [20世紀の歌Ⅱ]

I Don't Believe You've Met My Baby
written by Autry Inman
recorded by the Louvin Brothers

001.jpg
ルービン・ブラザーズ(The Louvin Brothers)はアイラとチャーリーの兄弟によるカントリー・デュオである。主に50年代に活躍したバンドで、ギターとマンドリンによるバンドとしては他に The Delmore Brothers (マンドリンの代わりに4弦ギター)や The Monroe Brothers・The Blue Sky Boys などがあった。ブルーグラスを始めた頃、まず The Blue Sky Boys を先輩のレコードで知り、ブルーグラス以前のバンドとして聴いていた。ルービンはその後しばらくしてから "Tragic Songs of Life" を買って聴いたのが始まりであった。ブルーグラスバンド The Osborne Brothers のやっていた "Kentucky" という美しい曲の元歌が彼らのだったからかな。兄弟による美しいハーモニーに魅力を感じたが、ブルーグラスのタイトなリズム感はあまり感じられず、次第に聴かなくなっていたように思う。

その後ブルーグラス・カントリー系の色々なバンドの曲を聴いていると、ルービンのカバーが多いことに気がついた。極めつけは2003年にカール・ジャクソンのプロデュースによるトリビュートアルバムが出され、多くのミュージシャンにリスペクトされているんだなあ、と自分の中で評価を改めることとなった。改めて聴き直してみると、カーターファミリーに端を発した白人ストリング・バンドが、40年代の中ごろから大きく二つの流れに分かれていった時期のような気がする。あくまで個人的な感覚に過ぎないのだろうが、よりブルースの影響やタイトなリズムを重視した The Monroe Brothers はその後5弦バンジョーのアール・スクラッグスと出会い、ブルーグラスへと発展していった。一方、よりハーモニーの美しさに重きを置いた The Louvin Brothers はカントリーの方向にシフトしていったと考えられる。どちらもその後の音楽の潮流を決定付けたバンドであるといえるように思う。

ブルーグラスの中でも、Jim & Jesse はルービンに近いバンドのように思われるし、その後のエヴァリー・ブラザースやサイモン&ガーファンクルにまでつながっていると言ったら言いすぎだろうか。

取り上げた曲は、ロカビリー系の S&SW である Autry Inman の作だそうだが、1956年に出されたシングルは彼ら唯一のUS Country Chart #1のヒットとなった。長い題名なのであえて邦題を付けると「昨日見た夢」となるかなと思うのだが、そうすると60年代のフォークソング "Last Night I Had the Strangest Dream"(これも長い題名! ) になってしまう(笑)。歌はリフレインを持たないバラッド形式で、昨日の夜見た夢の中で恋人が別の男(女)の人と一緒にいた、という辛そうな内容なのだが、最後にどんでん返しがあって、ハッピーエンドに終わるという、まるで落語の落ちのような筋書き。当時のカントリーソングはこういう日常の一部を切り取ったような内容が多かったのかな。一人で歌ってもいいような内容(アリソン・クラウスはひとりで歌ってる)だが、彼らはそれを二人の掛け合いで演奏していて、ドラマチックな盛り上げ方になっているようだ。

私がこの曲を初めて聴いたのは、カントリー・ガゼットの2nd Album に入っていたものだが、その後多くの人々によってカバーされていると知った。海の向こうではこのように、先達の歌を大事に歌い継いでいるのだなあ、と伝統の素晴らしさを感じたことであったよ。
Alison Kraus
002.jpg
Harley Allen
003.jpg
youtubeはまずルービンのもの
Louvin Brothers - I Don't Believe You've Met My Baby
https://www.youtube.com/watch?v=lWp7MGY3II4
続いてアリソン・クラウスのもの
Don't Believe You've Met My Baby
https://www.youtube.com/watch?v=iwUkg6dOKak
これはトリビュート・アルバム "Livin',Lovin,Losin'"に入っているもの
Dierks Bentley and Harley Allen I don't believe you met my baby
https://www.youtube.com/watch?v=W-BLtGsc6SI
※ Harley AllenはRed Allenの息子さんで、2011年に亡くなっているとか。びっくり。.
おまけ。Jim&Jesse+Don't Believe You've Met My Baby
https://www.youtube.com/watch?v=wiYH9lv-xjg


昨日見た夢(I Don't Believe You've Met My Baby )
(大意。原詩は検索してみてください)

昨日の夜雨の降り続く中
私は悲しくブルーな気持ちでベッドに入っていると
あなたののことを夢で見た

夢の中で私は夕方の散歩をしていた
収穫祭のころの満月のもとで
あなたのことを想っていた

そして月明かりの中私達は出会った
星たちがあなたの瞳の中で輝いていたけど
そこには別の男性の姿もあった

あなたが他の誰かとと会うなんて信じられない
あなたは彼を見つめ、そして私を見た
あなたが話しているのは誰なんだろう

私はその見知らぬ彼と握手しようとしたけど
その手を引っ込めてしまった
まだ警戒する気持ちだったから

あなたは彼の肩に手を掛けて
彼に微笑みかけ、彼も微笑み返した
彼の目は勝利に輝いているように見えた

彼は「妹は(私と)結婚したいって」と言った
それで私の心は安堵で満たされた
だってあなたは私と結婚しようとしてたんだと知ったから

※こういう歌の常として男性版と女性版ではHe と She が入れ替わる


The Absolutely Essential 3 CD


Livin Lovin Losin: Songs of the Louvin Bros


Traitor in Our Midst/Don't Give Up Your Day Job


Now That I've Found You: Collection


nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

悲しき天使(Those Were The Days )[私の好きな20世紀の唄たち]vol.54 [20世紀の歌Ⅱ]

001.jpg

Those Were The Days
written by Gene Raskin
sung by Mary Hopkin

002.jpg
Those Were The Days(悲しき天使)は、68年イギリスのフォーク歌手だったメリー・ホプキン(Mary Hopkin)のアップル・レコードでのデビュー・シングルで、米英そして日本でも大ヒットした。少し遅れて漣健児の日本語歌詞で森山良子が歌ったものもヒットした(ヴィッキーの仏語版もあったらしい)。Gene Raskin の作となっているが、原曲は19世紀末にロシアで作られた「長い道」という歌で、それを Gene Raskin がリメイクしたものであるようだ。ポール・マッカートニーのプロデュースではなばなしくデビューしたメリーだが、もともとフォーク志向であったため2nd single の「グッドバイ」(これも切ない良い歌)を出した頃からポップ路線で売り出そうとするポールとうまくいかなくなり、やがて袂を分かつ。彗星のようにデビューして、いつの間にか消えていった(本当は消えていないのだが)と私たちが感じるのはこのためかもしれない。
003.jpg
邦題の「悲しき~」は例によって当時の「売れる題名」のシリーズ(本当に内容と関係ないなあ)だが、日本語訳は比較的原曲の内容に沿ったもので、「思い出すわ あの日のこと あたたかい恋の夢… 」というフレーズは今でも時折脳裏によみがえってくることがある。ちょうど高校に入ったばかりだったということもあり、間違いなく自分の「青春の歌」の一つに数えられると思う。
004.jpg
歌の内容をやや自分に重ねながら紹介すると、学生の頃夢や理想を確かに持っていると感じ、仲間同士で語り合っていたが、やがて就職し仕事が忙しくなるにつれて、日々の生活に追われて自分の本来あるべき姿を見失ってしまうことも多くなった。そんなある日懐かしいあの店に立ち寄ってみたが、店のガラスに映っていたのは、かつての若々しさも美しさもすっかり影をひそめてしまった自分の姿だった…。

こう書いてしまうと何か身もふたもない感じもするが、誰もが人生のある時期に感じてしまうことなのかもしれないし、もっとその時々に自分のなすべきことはやってきたさ、と感じる人もいるのだと思う。ロシア民謡から採ったと思われる哀調あふれるメロディは、そういう失われつつあるものへの哀惜の念をより募らせる。それにしてもこんな曲を若干18歳のメリー・ホプキンに歌わせたポールって、とも思ってしまう。まあ人生に疲れた中年の人が歌う方がいいとも思われないのだが。様々な立ち位置からそれぞれの受け止め方をすればいいのかもしれない。
005.jpg
2005年にはドリー・パートンがメリー・ホプキンとともにこの曲をカバーし、同名のアルバム『Those Were the Days』に収録した。私も当時購入したが、ブルーグラスの楽器を使い、酒場のノイズもバックに流しながらドラマチックな演奏になっていた(下のyoutube)。最近何かのCMのバックに流れていて、また懐かしさがこみ上げてきたのも、一旦放り出したこの稿をもう一度書こうと思うきっかけになった。気ぜわしい師走の頃に相応しい歌のような気がする。

youtubeは以下の四つ。良子さんのは見つからなかった。licenseの問題かな。
Those Were The Days 【メリー・ホプキン 悲しき天使 】
https://www.youtube.com/watch?v=h5P1NTNWgr8
悲しき天使 - ヴィッキー
https://www.youtube.com/watch?v=2wqKYttesCE
新妻聖子 Niizuma Seiko 悲しき天使 Those were the days
https://www.youtube.com/watch?v=33g2fIy0JRM
Those were the days - Dolly Parton
https://www.youtube.com/watch?v=w_sjHnzPyT4

おまけにグッドバイも。これも甘酸っぱい青春の歌だ。
Mary Hopkin ~ Goodbye
https://www.youtube.com/watch?v=WZqtwwo_0qc


楽しかったあの頃[Those Were The Days] (大意。原詩は検索してみてください)

ずいぶん昔のことだった 一軒の居酒屋があって
そこで私たちは一・二杯のグラスの酒を飲んでは
時を忘れて笑い興じていた
自分たちが何ごとかをなす未来を夢見て

**
あれはそんな素晴らしい時代だったね、友よ
楽しい日々に終わりはないと信じていた
永遠に私たちは歌い踊り続け
自ら選び取った人生を生き
戦いを挑み決して敗れることはないと
私たちは若かった そして確固とした生き方を持っていたから
  La La La La La La
  La La La La La La
  La La La La La La La La La La

それから、多忙な年月が疾風のように過ぎ去って
その中で持っていたはずの美しい生き方を見失っていった
もし、偶然あの居酒屋で再び逢うことがあったら
互いに微笑みあって、こんなふうに語るでしょう

**

今夜、私はあの居酒屋の前を通りかかり
以前そうしたように中を覗き込んでみた
ガラスに不思議な姿が映り込んでいた
そこに移っている淋しそうな女は本当に私?

**

ドア越しに懐かしい笑い声が漏れてきて
あなたの顔が見え、私の名を呼んでいるのが聞こえた
ああ友よ、私たちは歳をとったけどより賢くなれたわけではないよね
私たちの心には、今でもあの頃と同じ夢を抱き続けているのだから

**


ベスト・オブ・メリー・ホプキン


Those Were the Days


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

MY BACK PAGES[私の好きな20世紀の唄たち]vol.53 [20世紀の歌Ⅱ]

MY BACK PAGES(私の過去帳)
     written by Bob Dylan

001.jpg
ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したからというわけでもないが、再びとり上げてみよう。実は半年前ぐらいにこの曲について書いてみようと思ったのだが、詞が難解すぎてお手上げ状態だったというのが真相である。今回再トライするにあたって、いくつかの訳詩をwebで見たのだがそれでも分らない。だから今のところ判ったのはここまでという状態で書くのである。
002.jpg
この曲は1964年に発表されたアルバム " Another Side of Bob Dylan" に収録されている。それまでのアルバムで、「風に吹かれて」「戦争の親玉」「第3次世界大戦を語るブルース」「時代は変る」などのプロテストソングが脚光を浴び、時代の代弁者のようにもてはやされたことに嫌気がさしたのか、このアルバムではプロテストソングといえる歌は歌っていない。レッテルを貼られるのが何よりも嫌いなのは今回の賞に対する対応(といっても今のところ無言を貫いているだけだが)からも窺い知ることが出来るだろう。
004.jpg
私はこの曲を何で知ったのだろう。ディランのオリジナルアルバムで知ったのではないことは確かだ。ディランの初期に彼の作品を多く取り上げて、世に知らしめたのは PP&M、Joan Baez、そして The Byrds といっていいだろう。特に The Byrds はディランの "Mr. Tambourine Man" でデビューしたぐらいだから、実に多くのディラン・ソングを歌っている。あるいは92年の "Bob Dylan's 30th anniversary concert" あたりかもしれない。ラスト辺りで Bob Dylan-George Harrison-Tom Petty-Eric Clapton And Friends という豪華メンバーでやっているが、基本のアレンジはバーズのもののようである。youtube でもノーベル賞の余波か「この国では視聴できません」というものがいくつかあるのもご愛嬌?
003.jpg
曲の内容は象徴的な言葉が多くて分りづらいが、プロテストソングを多く歌っていた時期の自分が、やや頭でっかちでスレテオタイプだったかもしれない、という自己批判的な歌なのかな、という視点で見ると少し分ってくるような気がする(少しだけど)。若い頃はやや性急に自分と世界を理解しようとし、また理解した気になっていることは多いものだが、歳を重ねていくと別の見方も出来るようになっていく。その一方で分別臭くもなっていくのも事実だが、ディランの「常に今より柔軟な感性を持っていたい」という姿勢、そしてそれを75歳になる現在まで持続しているところが何よりすごいことだと思う。 "Younger than Yesterday" はこの曲が収められたバーズのアルバムの題名であるが、自分もあたう限りこのように生きていきたいものだ、としみじみ思ったことだ。
005.jpg

youtubeはまずディラン本人のもの。
Bob Dylan - My Back Pages (1998)
https://www.youtube.com/watch?v=LeEkYvrdZvo
続いてバーズのもの。上とアレンジが違うのが面白い。
The Byrds - My Back Pages (1967)
https://www.youtube.com/watch?v=h80l4XIPJC4
30周年コンサートのリハーサルビデオ。珍しくも興味深い。
Bob Dylan-George Harrison-Tom Petty-Eric Clapton And Friends. A Rehearsal
https://www.youtube.com/watch?v=wtQKE4I8U-M
ジャクソン・ブラウンとジョーン・オズボーンのデュエット。これいいね。
Joan Osborne & Jackson Browne - My Back Pages
https://www.youtube.com/watch?v=L8LpdLXe5sg

私の過去帳 (大意。原詩は検索してみてくださいね。)

私の耳に縛り付けられた真紅の炎は
高く舞い上がり
巨大な罠が燃え上がる路上に仕掛けられていた
頭の中の思念を自分の武器にして
「先端で会おう」と言った私の
眉の下は高慢な光に満ちていた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

半ば壊れかけた偏見に踊らされていた私は
「全ての憎悪を切り裂け」などと叫んでいた
人生は白か黒に見極められるという虚言を
頭の中だけで考え喋っていた
昔の銃士たちの考えたそれなりに深く構築された
ロマンチックな物語を夢想していた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

見せかけだけの嫉妬心から
古代の歴史の暗誦に至るまで
少女たちの顔は前向きの路を示していた
でもそれは死せる伝道者たちにより
無自覚に投げ出されたものに過ぎなかった
いずれにしても

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

教授を自称する男の口からは
愚かしいほどに真面目な言葉が
飛び出した
「自由とは学校では平等だということにすぎない」
「平等」私はこの言葉をまるで
結婚の誓いのように常に口にしてきた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

兵士のように身構えて私は
教えを説くつまらない雑種犬に狙いを定めた
自分が説教をたれた瞬間に
今度はおのれ自身が自らの敵になることに
恐れも抱かず
私の存在は舳先から船尾まで暴動と反乱にみちた
混迷する船に導かれていた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

そう、私の神は抽象的思考の脅威にあっても
厳として立ち、その姿は
あまりに高貴で無視できなかった
神は私をだまし、
おまえには守るものがあるのだと思わせた
私は、善と悪という二律を極めて明晰に
疑いもなく定義してみせた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ


昨日よりも若く(紙ジャケット仕様)


ボブ・ディラン30周年記念コンサート [DVD]


nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Don't Know Why[私の好きな20世紀の唄たち]vol.52 [20世紀の歌Ⅱ]

101.jpg
Don't Know Why
written by Jesse Harris
sung by Norah Jones

この歌は2002年に発表されたノラ・ジョーンズのアルバム "Come Away with Me" に収録されていた歌で、これでは「21世紀の歌」になってしまうが、ジェシー・ハリスが作ったのは98年らしいので、かろうじて「20世紀の歌」になっているといえるか(笑)。98年ごろからジェシーとノラは一緒にバンド活動をしていて、その頃からジェシーの楽曲を歌っていたようである。

アルバム "Come Away with Me"はその年のグラミー8部門を受賞し、全世界で1800万枚を売り上げたと言われている(累計で2300万枚とも)。ブルーノートというジャズのレーベルから出ているが、ジャズという枠に収まりきれない幅を当時感じさせた。その後 " The Little Willies " というカントリーバンドでアルバムを出したりして、それはそれで親しみ深かったのだが、やはりこのファーストアルバムを凌駕するものではなかったように思う。この秋に「ノラがジャズに帰って来た」という触れ込みのニュー・アルバム "Day Breaks" が出るので楽しみではある。

スモーキー・ヴォイスと言われる歌声も、ピアノプレイも唯一無二のような気がする。父親があの有名なシタール奏者ラヴィ・シャンカルということも彼女の音楽に何らかの影響を与えているのかなとも思うが、3歳のとき両親は離婚し、母親に育てられたようなので、直接の影響はないのかもしれない。
102.jpg
ジェシーがこの歌を女性の視点で書いたのかどうかは定かではない。ジェシー自身も歌っているのでどちらもありなのかな、とも思う。歌詞は平易な言葉で綴られているが、よく分からない部分もある。「君」が行っている "the house of fun" は単なる遊興場なのか別の仲間たちと「楽しんでいる」のか。webで検索するとスロット・マシーンがたくさんヒットしたけど…。"bag of bones" というのは「やせこけて」と訳したが、心の痛みを引きずっていたから? 聴いていると "vagabond”(放浪者) にも聞こえて、こっちでもいいような気がしてくるし…。
103.jpg
彼(彼女)のところに今駆けつけたら、壊れかけた関係は修復できるかもしれないのに、行かなかったのは「なぜだか分らない」とつぶやくところが、この歌の肝なのだろうが。何か切実な内容なのに、もう一つ乾いた目がそれを眺めている、というような感じである。これが21世紀の感性なのだろうか。でもずいぶん昔を振り返ってみると、自分たちの若い頃の恋愛体験の中にも同質のものがあったような気もする。モラトリアム世代だとも言われていたなあ。お仕着せの価値観は受け入れられないが、自分で方向性をはっきり見出すことも出来ず、状況に流されていく…。Life is like a Circle Game だね。

ノラのちょっと乾いた、あるいは湿ったスモーキー・ヴォイスそのものが、どんな切実な歌を歌ってもそれらを全てやさしくオブラートに包んでくれるのかもしれない。
104.jpg

youtubeはノラ・ジェシーそして原田知世のものを
ノラ・ジョーンズ「ドント・ノー・ホワイ」
https://www.youtube.com/watch?v=SrhJN1e8OHs
Don't Know Why (Jesse Harris - Solo)
https://www.youtube.com/watch?v=eiRN-d-LAaQ
原田知世 - ドント・ノー・ホワイ feat. ジェシー・ハリス
https://www.youtube.com/watch?v=3pxFNTZs9f4
ニュー・アルバムに入っているCarry Onを
https://www.youtube.com/watch?v=DqA25Ug71Mc

youtubeを観ると実に様々なミュージシャンとデュエット(セッション)していて驚くが、何を歌ってもノラの歌になってしまうところがやはりすごいなと思ったことだよ。
Norah Jones Best Duets
https://www.youtube.com/watch?v=Zo0kx_Rh24M&list=PL_wvx_-XWq-W_iDpHcqPl513rZ7skHDG0

なぜだか分らない

夜が明けるまでずっと待っていた
どうして行かなかったのだろう
君が遊興の場にいりびったっているのに
どうして放っておいてしまったのだろう

夜明けの光が射したとき
どこかへ飛んでいってしまいたいと思った
ずっと砂浜にひざまずいて
涙を手で受け止めるのをやめて

心はワインをしこたま浴びているのに
君の事がいつまでも頭から離れないでいる 

果てしなく広がる海原に出ていって
恍惚のうちに死んでしまいたい
でも実際は骨のようにやせこけて
独りぼっちで歩き続けるのだろう

心はワインをしこたま浴びているのに
君の事がが頭から離れない いつまでも

夜が明けるまでずっと待っていた
どうして行かなかったのだろう
君が遊興の場にいりびったっているのに
どうして放っておいてしまったのだろう

夜明けの光が射したとき
どこかへ飛んでいってしまいたいと思った
ずっと砂浜にひざまずいて
涙を手で受け止めるのをやめて

心はワインをしこたま浴びているのに
君の事がが頭から離れない いつまでも


Come Away With Me


Day Breaks


Norah Jones: Live In New Orleans [DVD] [2003] by Norah Jones


nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Long Black Veil[私の好きな20世紀の唄たち]vol.51 [20世紀の歌Ⅱ]

001.jpg
Long Black Veil
written by Danny Dill and Marijohn Wilkin
originally recorded by Lefty Frizzell.

この歌は50年代から60年代に活躍したカントリー・シンガーのレフティ・フリッツェルが59年に発表したものがオリジナルのようである。私はジョーン・バエズやザ・バンド、そしてブルーグラスのC.G.で知ったが、この稿を書くにあたってあちらのwikiを見るとおびただしい数のカヴァーがあるのに驚いた。多くのミュージシャンに取り上げられるこの歌の魅力はいったいどこにあるのだろう。
003.jpg004.jpg
レフティについてよく知っているわけではないが、ブルーグラスでもいくつかの曲がとり上げられている。"She's Gone, Gone, Gone""Railroad Lady"などがそうだ。また、正調ホンキートンク・カントリーの担い手として前にとり上げたマール・ハガードも崇拝していて、レフティのNo.1ヒットである " Saginaw Michigan " の歌い方を模倣したというのは有名な話らしい。
002.jpg
さて歌の内容であるが、事実を元にした Topical Song ではないだろうが、物語になっている歌=バラッドで、古いフォークソングには意外と多い、殺人の歌(Murder Ballad)という要素と、親友の妻と寝てしまったという不倫の要素が組み合わさった歌である。前者では ” Banks Of The Ohio " が有名だし、後者は親友に彼女を紹介したら奪われてしまったと歌う " Tennessee Waltz " がある。アメリカ南部の人々はこのような赤裸々な歌を好むのかな、と不思議な気もする。

訳詩を見ていただくと内容はほぼわかると思う。殺人罪の被疑者になり、アリバイを証明できなければ死刑になるとわかっているのに、そのためにはその時間帯に親友の妻と密会していたことを告白しなければならない。悩んだ男は黙秘して死刑を受け入れる道を選んだというのだが、ちょっと理解し難いようにも思える。自分なら全てを告白して親友を裏切ったという汚名を敢えて引き受ける方を選ぶような気がするし、そもそもそんなに親友を裏切ることが許されないなら、初めからしなければいいのにとも思う。死を賭して愛する女性の名誉を守ろうとしたという点が美しいと考えられたのだろうか。
005.jpg
人という存在そのものがそういう矛盾に満ちたものであるということなのかもしれないし、罪を犯してもそのことを神にだけ告解し、墓場まで持っていくというクリスチャンのあり方のようなものが背景にあるのかもしれない。いずれにしても日本にはこのような歌はないような気がする。江戸時代の武士の世界ならこんな設定の話はあるかもだけど。いずれにしても文化の違いを強く感じる歌ではあるなあ。

最後になるが、この歌は死者である男の視点から歌われているという点でも極めて特異な歌だということもできるようだ。アメリカは歴史が浅い国なので、幽霊やゴーストなどの超常現象に惹かれる傾向が強いという話も聞いたことがあるがどうだろう。

youtubeはまずレフティのもの。挿絵が雰囲気を出している。
Lefty Frizzell.... Long Black Veil - 1959.wmv
https://www.youtube.com/watch?v=w7t1-Rftx2U
続いてJOAN BAEZ - THE LONG BLACK VEIL, Milano 2008
https://www.youtube.com/watch?v=r9kTSf20pP0
The Bandの初期のアルバムから, "Long Black Veil"
https://www.youtube.com/watch?v=YMwPd27sg_k
チーフタンズのLong Black Veil。歌の内容に沿った動画が。
https://www.youtube.com/watch?v=888TFXZ6Ko0
このブログを読んで下さったI沢氏がこの歌のアンサー・ソングをFBで紹介してくれたので引用しておく。アンサーというよりは密会の相手の女性の立場に立った歌詞に替えられているということではあるが。
My Long Black Veil - Marijohn Wilkin
https://www.youtube.com/watch?v=sICQszWNivY

Long Black Veil (大意。原詩は検索してみてください。)

今から10年前の肌寒く暗い夜のことだった
市庁舎の灯りの下で一人の男が殺された
現場を見た人たちは皆口々に
逃げた犯人は私によく似ていたと証言した

裁判官は言った「お前にアリバイはあるのか」と
「お前が別のところにいたと証明できたら
お前は死なずにすむだろう」
私は黙って語らなかった 生きるか死ぬかの状況なのに
その時私は親友の妻の腕に抱かれていたのだから

**
今、彼女は長く黒いヴェールで顔を覆って丘を上がり
夜の風が嘆くように吹き付ける頃ひそかに私の墓を訪れる
誰もそのことを知らず、見てもいない
私以外の誰も

絞首台は高くそびえ、死はすぐそこにある
彼女は群集の中に紛れ、涙を見せることはない
でも時に冷たい風がむせび泣く夜
長く黒いヴェールに身を包んだ彼女は私の墓に涙を落とすのだ


3 Classic Albums Plus


Music From Big Pink


Country Songs Old & New


nice!(11)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Silver Wings(銀色の翼)[私の好きな20世紀の唄たち]vol.50 [20世紀の歌Ⅱ]

001.jpg
Silver Wings(銀色の翼)
     written by Merle Haggard

マール・ハガードは1937年4月6日にカリフォルニアで生まれたとあるが、父親はオクラホマの出身で、'31~'39年にオクラホマ一帯で起こった「大砂嵐(Dust Bowl)」や「大恐慌」のために故郷を捨てて西に移り住んだようだ。このことは " RAMBLIN' ROUND "[20世紀の歌Ⅱ] でも少し触れた。音楽は好きだったがいわゆる不良少年で、すさんだ生活をしていたようだ。20歳のころ強盗罪でサンフランシスコの刑務所に入ったが、58年の正月に慰問に来たジョニー・キャッシュの歌を聴いて歌手を志す決意をしたと言われている。

その後模範囚となり出所してからは、ベイカーズフィールドでカントリーの歌をを作り歌い始める。彼の作る歌は労働者や死刑囚などの体験をストレートに歌ったものが多い。彼がバック・オーエンズらと作ったサウンドは後にベイカーズフィールド・サウンドと呼ばれるようになる。ポップでおしゃれなナッシュビル・サウンドとは対極をなすものだ。
002.jpg
ヴェトナム反戦運動が頂点を迎える69年に、彼はそれらの流れを全否定するような歌 " Okie From Muskogee " (モスコギーからの流れ者)を作り発表する。「俺たちはヒッピーたちみたいにマリファナやLSDもやらないし、徴兵カードを焼き捨てたり、乱痴気騒ぎなんかしないさ…」という歌詞には、非常に保守的なものを感じて、歌っていいのかなと思うこともしばしばだった。今改めて見直してみると、彼はヒッピーたちの変革の行動の中に、何か地に足の付かない上滑りなものを感じていたのではないか。政治的なメッセージというよりは、オクラホマ出身の貧しい流れ者の息子として、日々のささやかな生活を大切にする、そういうところから乖離してなにが変革か、と言いたかったのかもしれない。

彼の代表曲としては、上記の歌や死刑囚とのやり取りを元にした " Sing Me Back Home "、 " Mama Tried " " Working Man Blues " など数多いが、あえて " Silver Wings " を選んだのは、マールの曲で最初に知ったものだからでもある。確かリンダ・ロンシュタットが誰かのアルバムのゲストで歌っていたのではなかったか。リンダ経由で知ったアーティストの多いことよw

Muskogee と同じ69年に別のアルバムで発表されたこの曲は、飛行機で去っていく恋人のことを歌った失恋ソングである。もう一昔前だったら列車で去っていくというところだが、この時期ライトフットの「朝の雨」やジョン・デンバーの「悲しみのジェットプレイン」など、飛行機を扱った歌が次々と出てくるのは、フォーク・カントリーミュージックの歴史の流れのひとつのエポックを感じさせるところではあるなあ。

長田弘さんが『アメリカの心の歌』の中で「(彼の歌は)ただ一人の私の歌だ。<中略>ほとんど形容詞がない。直截で、飾らない。それでいて容積が大きい」と言っているが、この歌にもそれが当てはまるように思う。最低限の感情しか吐露していないため、聞く者にそれぞれの「別れ」の物語を紡がせる、そんな歌だ。それは彼の生き方そのものでもあるのだろう。シングルカットされたわけでもないこの曲が、遠く離れた日本でも多くの人々に愛される所以だろう。今でもこの曲名で検索すると、多くの店の名やバンド名になっているのがほほえましいくらいだ。
003.jpeg
そんな彼が先日亡くなった。奇しくも April 6, 2016 (aged 79) 、誕生日と同じ日に。マールの歌ももっと色々聴いて自分の歌にしていこうと思っていた矢先であった。残念であるが、ドラマチックに生きてドラマチックにこの世を去っていった彼の数々の歌を、私も生きている限り歌いついでいきたいと思った。

youtube はまずマールのもの
MERLE HAGGARD-SILVER WINGS
https://www.youtube.com/watch?v=-Xpl8m7Y1pw&nohtml5=False
リンダのは見つからないのでスージー・ボガスのもの
Suzy Bogguss - Silver Wings (Live)
https://www.youtube.com/watch?v=Wcaf6j_TSTU&nohtml5=False
マールの授賞式でのクリスとミランダの歌
Silver Wings - Kris Kristofferson and Miranda Lambert - Kennedy Center Honors Merle Haggard
https://www.youtube.com/watch?v=FFzPBT77jtk&nohtml5=False

Silver Wings(銀色の翼)

銀色の翼よ、日の光を浴びて輝いている
エンジンは轟音を上げ、どこかへ飛び立とうとしている
お前をどこかへ連れ去り、俺を独りぼっちで置き去りにする
銀色の翼はゆっくりと視界から消えていく

 「俺を置いていかないでくれ」俺は泣く
 飛行機に乗らないでくれ
 けれどお前は俺のことを心から追い出して鍵をかけ
 俺をここに立ちすくんだまま置き去りにする

銀色の翼よ、日の光を浴びて輝いている
エンジンは轟音を上げ、どこかへ飛び立とうとしている
お前をどこかへ連れ去り、俺を独りぼっちで置き去りにする
銀色の翼はゆっくりと視界から消えていく


Very Best of MERLE HAGGARD


nice!(10)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Friend of Mine(あいつは俺の友だった)[私の好きな20世紀の唄たち]vol.49 [20世紀の歌Ⅱ]

He Was a Friend of Mine
          traditional
001.jpg
-Yに捧ぐ-
この歌はディランの作と言っているものもあるが、元はトラディショナルで初出は'39年、 " Shorty George " という曲名で出ているそうだ。おそらくフォークリヴァイバルの中で様々なシンガーたちがアレンジして歌ったのだろうと思われる。以前から聴いていたはずだが、それほど印象に残っていなかったようだ。
002.jpg003.jpg
'06年に日本でも公開され、同性愛を描いて話題になった(アカデミー賞の監督賞)映画『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』の主題歌に取り上げられ、そこでウィリー・ネルソンが歌っているのを聴いて心に染みた。そのあとで、以前に買っていたナンシー・グリフィスの '98年の " Other Voices, Too " にも入っていたのを「再発見」したような次第である。
004.jpg
歌の内容は、たぶん不慮の死を遂げた友を悼むものである。「友」というより「同志」といった方がいいのかもしれない。なにも悪いことなどしてなかったのに、路上で無残に死んでいった。誰も彼を助けてはくれなかったのだろう。そういう虐げられた者たちの歌だから、その時代時代で多くのシンガーたちが歌ってきたし、これからも歌い続けられていくのだろうと思った。前に触れた映画でも、当時(60年代)の同性愛者たちは今よりずっと偏見にさらされていたのだろうし、本人たちもその偏見から自由ではなかったかもしれないなあ、と改めて思う。
005.jpg
余談だが、下の youtube で紹介した中でバーズのバージョンは、かのジョン・F・ケネディを「友」として詞を改作している。ダラスで撃たれたジョンのことを、当時多くの人々が悼んだであろうことが推察され、興味深い。直接の深い付き合いはなくとも、心の中で「友」と思っていた人を次々と喪っている今日この頃であるが、なんだかせつないなあ。

Youtubeはいろいろあげてみた。
Willie Nelson - He Was A Friend Of Mine
https://www.youtube.com/watch?v=ahc4GbDPEVI
Bob Dylan - He Was A Friend Of Mine (Finjan Club 1962)
https://www.youtube.com/watch?v=t2Xvt0_H5vA
Dave Van Ronk - He Was A Friend Of Mine
https://www.youtube.com/watch?v=754sRFIHIrA
Dave Van Ronk と Nanci Griffith がデュエットしてる。Dave が勝手に歌うので困っているNanci が可愛い。
https://www.youtube.com/watch?v=svCtvyIV9wY&list=RDsvCtvyIV9wY
The Byrds - He was a friend of mine
https://www.youtube.com/watch?v=nRanxGWKF8M


あいつは俺の友だった

**
あいつは俺の友だった
あいつは俺の友だった
あいつのことを思うと今も
泣かずにはいられない
だってあいつは俺の友だったから

あいつは路上で死んださ
あいつは路上で死んだんだよ
あいつはいつも金に困っていて
住む家とてもなかた
あいつは俺の友だった

俺はこっそり逃げ出しては泣いたよ
俺はこっそり逃げ出しては泣いたよ
だって金はちっとも手に入らないし
満足することなんて全くなかったから
そしてあいつはあいつは俺の友だった

あいつは悪いことなんて一つもしてなかったさ
あいつは悪いことなんて一つもしてなかったさ
故郷から千マイルも離れて暮らして
誰も傷つけたりしてはいなかったのに…
あいつは俺の友だったのさ

**
あいつは俺の友だった
あいつは俺の友だった
あいつの名を耳にするたびに
泣かずにはいられない
だってあいつは俺の友だったから

He Was a Friend of Mine

***
  He was a friend of mine
  He was a friend of mine
  Every time I think about him now
  Lord I just can't keep from cryin'
  'Cause he was a friend of mine

He died on the road
He died on the road
He never had enough money
To pay his room or board
And he was a friend of mine

I stole away and cried
I stole away and cried
'Cause I never had too much money
And I never been quite satisfied
And he was a friend of mine

He never done no wrong
He never done no wrong
A thousand miles from home
And he never harmed no one
And he was a friend of mine

***
  He was a friend of mine
  He was a friend of mine
  Every time I hear his name
  Lord I just can't keep from cryin'
  'Cause he was a friend of mine. 

 
Brokeback Mountain


Other Voices, Too (A Trip Back To Bountiful)


ターン・ターン・ターン(紙ジャケット仕様)


nice!(11)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

悲しき雨音(Rhythm of the Rain)[私の好きな20世紀の唄たち]vol.48 [20世紀の歌Ⅱ]

" The Cascades "
001.jpeg
Rhythm of the Rain(悲しき雨音)
     written by John Gummoe

この曲は62年に出されて63年に大ヒットした " The Cascades " の楽曲である。よく知っているのだが、当時は小学生だったので当然同時代的に知っていたのではない。いわゆるオールディーズとして、特に雨の多い梅雨時にラジオなどでよく流されるので知っているのだろう。日本では回転数を上げて72年ごろ出されたものがヒットしたとも言われているので、こちらで知ったのかな。様々なミュージシャンによってカヴァーされているが、個人的にはダン・フォーゲルバーグが90年のアルバム " The Wild Places " でカヴァーしたものが、しっとりとした感じで好きだ(ちなみに彼は " High Country Snow " というごきげんなブルーグラス・アルバムも出している)。
002.jpg
このバンドは60年ごろにカリフォルニア州サンディエゴあたりで、海軍の仲間で結成されたのが元になったようである。他にもヒット曲はあったらしいが、当時のアルバムをyoutubeで聴いてみるとあまり聞き覚えがなく、いかにもオールディズ然とした曲が多い中で上記の曲だけが異彩を放って今聴いても新鮮な感じを保っているように思える。やはり一発屋で終わったバンドだったといっていいのかもしれない。

邦題の「悲しき~」は例によって当時の命名の原則に従っているが、この曲に限って言えば原題の「雨のリズム」というそっけないものよりは内容を表しているといえなくもないなw 愛していた彼女に去られて落ち込んで、雨の音を聴きながら、ほっといてくれ、と八つ当たりしたり、逆に雨に彼女の気持ちを取り戻してくれと懇願したりと、ちょっと女々しい失恋ソングであるが、こんな気分になることもあるだろうから多くの人の共感も呼んでいるのだろう。ラジオでは流れないことが多いが、曲の冒頭で雷鳴が鳴り響き、次いで降りしきる雨の音が聞こえ、イントロが始まるくだりはとても斬新である。繰り返すが彼らの曲の中では奇跡的と言っていいほどサウンド的にも古さを感じさせない点からいっても、もはやオールディーズというよりはスタンダードと呼んだほうがいいと思えるほどの名曲である。

youtubeはまずご本家のもの。full album もアップされている。
Rhythm Of The Rain - THE CASCADES - With lyrics
https://www.youtube.com/watch?v=pt57gA1_W7c
よりしっとりとしたダンのもの。
Dan Fogelberg ~ Rhythm of the Rain
https://www.youtube.com/watch?v=loRE25Sc4ec



悲しき雨音 (大意。原詩は検索してみてください。)

外では雨が同じリズムを刻んでいる
お前はなんて馬鹿な奴だったんだろうと言うように
雨よどこかへ去って 僕を空虚な気持ちで泣かせておくれ
そして独りぼっちの昔に戻しておくれ

僕が初めて愛したひとは去ってしまった
新たな人生を求めてね
でもあの日去っていくとき
僕の心も一緒に持っていったことに気付かないでいる

 雨よそれはフェアじゃないんだと僕に言ってくれ
 彼女が僕の心を盗んでしまったのに気付かずにいるなんて
 自分の心を遠く持ち去られたままで他の人を愛するなんてできないよ

外では雨が同じリズムを刻んでいる
お前はなんて馬鹿な奴だったんだろうと言うように
雨よどこかへ去って 僕を空虚な気持ちで泣かせておくれ
そして独りぼっちの昔に戻しておくれ

僕が初めて愛したひとは去ってしまった
新たな人生を求めてね
でもあの日去っていくとき
僕の心も一緒に持っていったことに気付かないでいる


 雨よ僕がどれだけ深く彼女を愛しているか彼女に伝えておくれ
 そして太陽に彼女の心をもう一度燃え上がらせるよう頼んでおくれ
 そして二人の間に確かにあった愛がもう一度育つように

外では雨が同じリズムを刻んでいる
お前はなんて馬鹿な奴だったんだろうと言うように
雨よどこかへ去って 僕を空虚な気持ちで泣かせておくれ
そして独りぼっちの昔に戻しておくれ


悲しき雨音


Windows And Walls/Wild Places (2in1)


High Country Snows


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

One Tin Soldier[私の好きな20世紀の唄たち]vol.47 [20世紀の歌Ⅱ]

One Tin Soldier(天使の兵隊)
written by Dennis Lambert and Brian Potter
The Original Caste
one1.jpg
The Coven
one6.jpg
The Bluegrass Alliance
one2.JPG
私がこの曲を知ったのは70年に出されたThe Bluegrass Allianceのアルバムによってであった(72年大学入学後に聴いたのだと思う)。ブルーグラスにカントリーやフォークの曲を取り入れたモダンなサウンドで、もともとモダン・フォークぐらいしか知らなかった私にはある意味とっつきやすく、また新鮮であった。この曲もサウンドや独特のアレンジに惹かれて聴いたり口ずさんだりしていたのだと思う。

今回とり上げるにあたって改めて調べてみると、オリジナルはカナダのポップ・ロックグループ「ザ・オリジナル・キャスト」というバンドが69年に出したものだと知った。このバンドはアメリカではそれほど売れなかったようだが、本国カナダと日本でヒットしたという特異な流布の仕方をしたようだ。彼らのもう一つのヒット曲 " Mr. Monday " を改めて聴くと聞き覚えがあり、当時ラジオでも流れていたんだろうなと思った。
one3.jpg
曲の内容は「反戦歌」ということであるが、直接当時の例えばベトナム戦争を指すというのではなく、寓話として欲望から愚かな争いをしてしまう人間たちへの警鐘といった内容である。邦題「天使の~」は本稿でもよく指摘している、当時の売れ線狙いの命名であって、「鉛の兵隊」もしくは「ブリキの兵隊」の方が原題に近いが、やはりこれでは売れそうにないと考えるのもうなづけるw
one4.jpgone5.jpg
戦争の動機がかの地の「財宝」を奪うことに根ざしているというのは、かつての列強による植民地化まで遡らなくても、「石油利権」や「海洋利権」などを思い浮かべると、現在世界の各地で起こっている紛争のほとんどが当てはまる気がする。それらに対抗するのが " Peace on Earth " という言葉だけというのはなんとも無力な感もするが、だからこそ多くの人々によって歌われなければならないのだろうとも思う。40年経ってあの当時の反戦の歌がにわかに手ざわりをもってよみがえってくるような気がするのは私だけだろうか。

蛇足になるが、この曲について調べる中で、英語版wikiで、この曲がバロックの「パッヘルベルのカノン」と同じ構成であるとの記述を見つけた。似た構成の歌は数多くあるようで、曲作りの一つのパターンとして興味深かったことだよ。
--The verse of "One Tin Soldier" has the same harmonic base as Pachelbel's Canon (I-V-VI-III-IV-I-IV-V). The chorus is a simple I-V-IV-I.--

youtubeは上記の3バンドのもの。
One Tin Soldier - The Original Caste [Original]
https://www.youtube.com/watch?v=cTBx-hHf4BE
One Tin Soldier - Lyrics - Coven
https://www.youtube.com/watch?v=HKx0tdlxMfY
One Tin Soldier - Bluegrass Alliance (1971) COMPLETE!
https://www.youtube.com/watch?v=f_Q_fkvCLnY

パッヘルベルのカノンの一つ。比較してみよう。
Pachelbel's Canon in D--Soothing music(the best version)
https://www.youtube.com/watch?v=hOA-2hl1Vbc


One Tin Soldier[天使の兵隊](大意。原詩は検索してみてください)

子どもたち、聞きなさい
遥か昔に書かれた物語を
山の上の王国と下の谷に暮らす民たちのお話

山の上には財宝が
大きな石の下深いところに埋められていた
谷の民たちはその財宝を
自分たちのものにしようと誓った

**
上にいる隣人を憎み
だますんだ
神の名のもとにそれを行え
そうすれば最後にはそれは正当化される
最後の審判の日がやってきても
トランペットの鳴ることはなく
血まみれの朝の後に
一人のブリキの兵士が去っていく

谷の民たちは丘の上にメッセージを送った
埋められている財宝を要求した
何トンもの黄金を渡さねば殺すと脅して

王国から返事が来た
我々の山に埋まっている全ての秘密と
全ての財宝を分け合おうと

今や谷の民たちは怒りで叫んだ
「馬に乗り、剣を持て」
そして山の民たちを殺し
当然の褒美を勝ち取った

彼らは財宝のそばに立った
山の上は暗く血に染まっていた
石をのけてその下を覗くと
そこには「この地上に平和を」
と書いてあるだけだった



ミスター・マンデイ~ベスト・オブ・オリジナル・キャスト


nice!(8)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

From A Distance[私の好きな20世紀の唄たち]vol.46 [20世紀の歌Ⅱ]

fr3.jpg
Nanci Griffith

From A Distance (ディスタンス)
       written by Julie Gold
       sung by Bette Midler, Nanci Griffith and many others

fr1.jpg
Julie Gold
この歌はジュリー・ゴールドという方が85年に発表したものらしい。90年にベット・ミドラーの名唱で大ヒットしグラミーもとったことで全世界に知られ、多くの国の言語に訳されて広まっている。最初にこの曲を取り上げたのは、かのナンシー・グリフィスで、87年にリリースされた名盤 " Lone Star State of Mind " に収録されている。
fr2.jpg
Bette Midler
歌の内容は、現実には争いや貧富の差などに満ちているこの地球も、遠く高い視点から見れば美しく愛に満ちているように見える、と語りかけている。もちろん見るべき現実から目をそむけよ、と言っているのではなく、近視眼的な目ではなく巨視的な目で見れば、本来のあるべき姿が見えてくると言いたいのだろう。あるいは、多くの人々は争いのない平和な世界を希求しており、争いや格差を生み出しているのはごく一部の権力者たちだけだ、と言いたいのかもしれない。

現実の向こうにある「あるべき世界」を「想像」してみようと歌ったジョン・レノンの " Imagine " と、「視点」を変えることで「あるべき世界」が見えてくるよ、と歌ったこの歌は、同じ願いを歌った一対の句のようにも見える。ただ、曲中の " GOD " はたぶんキリスト教の「神」を指しているのだろうが、だとするとそこにはイスラムの「神」も、オリンポスの神々や八百万の神々 etc. も含まれていないことになる。だから訳詩ではあえて「神々」と言ってみた。

あるいはそれらの神々を包括する「唯一神」的な存在がひょっとしたらあり、作者はそれを想定しているのかもしれない。宗教間の紛争が戦争の多くの部分を占めている昨今の状況を見ていると、それぞれの宗教を超えたより高い「視点」が今こそ必要とされているのかな、とも思う。

いずれにしてもこういう歌が存在し、そして歌い継がれ、歌い続けられることに何より大きな意味があるはずだ、と改めて思ったことだ。

youtube は上記の三人のものを。それぞれに味わいがあるなあ。
Bette Midler - "From A Distance" (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=lN4AcFzxtdE
Nanci Griffith : From A Distance (1990)
https://www.youtube.com/watch?v=jF4BralTQW8
From a Distance, Julie Gold
https://www.youtube.com/watch?v=F4q9JUMF0oc


ディスタンス (大意。原詩は検索してみてください。)

遠く離れた処から眺めると
この地球は青と緑に見えて
山々が白い雪の帽子をかぶっている
河の流れが広い海と出会い
鷲がゆったりと飛翔している

**
遠く離れた処から眺めると
そこには素晴らしいハーモニーがあり
すべての大地に広がり響いている
それは希望の声
それは平和を希求する声
それはすべての人々の声

遠く離れた処から眺めると
私たちは皆十分満ち足りていて
誰も助けを必要としていない
銃も爆弾も病気もなく
飢えに苦しむ人もいない
遠く離れた処から眺めると
私たちは一つひとつの楽器で
共同の楽団でマーチを奏でている
希望の歌々
平和の歌々を
それらはこの地上の全ての人々の歌だ

神々は私たちをじっと見ている
神々は私たちをじっと見ている
神々は私たちをじっと見ている
はるか遠くから

遠く離れた処から眺めると
あなたも私の友に見える
たとえ私たちが互いに戦っていても
遠く離れた処から眺めると
私には判らない
今行なわれている全ての戦争が何のためにあるのかを
遠く離れた処から眺めると
そこには素晴らしいハーモニーがあり
すべての大地に広がり響いている
それは全ての希望の集まり
それは全ての愛の集まり
それは全ての人々の心の願い

神々は私たちをじっと見ている
神々は私たちをじっと見ている
神々は私たちをじっと見ている
はるか遠くから…

The Best Bette


Complete Mca Studio Recordings

nice!(9)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

孤独の旅路(Heart of Gold)[私の好きな20世紀の唄たち]vol.45 [20世紀の歌Ⅱ]

young.jpg
Heart of Gold
  Written by Neil Young

ニール・ヤング(Neil Young)はカナダの出身で45年生まれ、1966年4月に結成された " Buffalo Springfield " に始まり、その後 " CS&N " に追加参加して" CSN&Y " として活動する一方で、アコースティックなソロ作品や、バックバンド " CRAZY HORSE " を従えてのハード・ロックなど多彩な活動をして現在に至っている。

72年に発表された " HARVEST " というアルバムにこの曲は入っていた。私がニール・ヤングを初めて知ったのはこのアルバムによってだった。確か兄がプレゼントしてくれたのではなかったか。そういう時もあったんだなあ、と感慨ひとしおであるが。アコースティックギターとハーモニカ中心のサウンドとどこか物憂げな歌声に、当時相当惹かれて、盤が擦り切れるまで聴いた気がする。

「孤独の旅路」という邦題は例によって感覚的な洋楽の 題の付け方とも見えるが、そうでもないのかもしれない。"Heart of Gold"というのは直訳すると「金の心」ということであるが、何かしっくりこない。「至高の精神」とでも言った方が近いのかもしれない。「唄歌い」が人々に何を与え、訴えることができるのだろう、と考えた時の心の持ちようと考えたらいいのだろうか。

" Redwood " は前に紹介した71年のライトフットの曲でも歌われていて、「母なる自然=神」のことかな、と書いた。" Hollywood " にも単に映画の聖地という以外に「聖なる場所」というような意味が含まれているのかもしれない。いずれにしても、ミュージシャンは死ぬまで孤高に自分の求めるものを追い続けて行かねばならないという「使命」や「覚悟」を歌ったものだとすれば、邦題もあながち的外れとは言えないのかもしれないw
young2.jpg
もう70歳を超えようとしながらエネルギッシュな活動を続け、 " FARM AID "などの社会的活動もしているのは、まだ20代の頃変に老成したようなこの歌を作った彼が、ずっとその気持ちを心の底に持ちながら生き続けているということなのだろう。つい最近はどこかの珈琲メーカーの不買運動をぶち上げてネットを賑わしたりしているが。いずれにしても「永遠の青年」である彼がこれからも進み続けるその背中を、私たちも追いかけて行きたいものだと思う。

余談になるが、同じカナダ出身のイアン&シルビアの歌 " Four Strong Winds " をニールが歌っているのをネットで見つけたが、今ではニール・ヤングの歌と思われるほどよく歌っているらしい。それどころかカナダのフォークコンサートなどでは必ずエンディングで歌われるというのでびっくり。私は「ブラザース・フォーも歌っているな」ぐらいの認識しかなかったが、この40年の間に「カナダの『わが祖国』」的な位置づけになっていることに、一つの歌が歴史の中で定着していく様を見たような気持ちになったことだよ。

youtubeはまずニールのもの
Neil Young - Heart of Gold
https://www.youtube.com/watch?v=pO8kTRv4l3o
彼のものしかないだろうと思っていたら、ジョニー・キャッシュ御大のものがあった。
Johnny Cash - Heart Of Gold.flv
https://www.youtube.com/watch?v=SifH-4E98R8

孤独の旅路(大意。原詩は検索してみてください)

私は生きたい
私は与えたい
私は「黄金の心」を捜し求める鉱夫だった
こんな表現ではうまく言い表せないが
それが私に「黄金の心」を捜し続けさせる

そして私は次第に年老いてゆく
「黄金の心」を捜し続けながら
私は次第に年老いてゆく
ハリウッドにも行った
レッドウッドにも行った
広い海原も渡ったよ、「黄金の心」を求めて
自分の心の中にももぐりこんだよ
微妙な綱の上を歩いていた
そのことが「黄金の心」を捜し続けさせる

そして私は次第に年老いてゆく
「黄金の心」を捜し続けながら
私は次第に年老いてゆく


Harvest


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Puff (The Magic Dragon)[私の好きな20世紀の唄たち]vol.44 [20世紀の歌Ⅱ]

Puff (The Magic Dragon)
written by Leonard Lipton & Peter Yarrow
Peter Paul & Mary
ppm1.jpg
" Peter Paul & Mary " は '61年に結成されたモダン・フォークグループである。他の多くのフォークグループと違って、敏腕マネージャー、アルバート・グロスマンによって意図的に結成されたバンド、というと前に挙げた " The Monkees " と似ているといえなくもない。「売れるフォークグループ」を目指し、実際その通りに時代の寵児になっていった。古いフォークソングのモダン・アレンジに始まり、ピート・シーガー、ディラン、パクストン、ライトフット、ジョン・デンバーらソングライターの曲を世に出した功績も多大なものがある。「20世紀の歌」の冒頭に紹介したディランの " Blowin' In The Wind " も彼らの歌によって最初にヒットしたのであった。
ppm2.jpg
私が最初に PP&M を知ったのは小学6年生の頃だったから '68年前後だった(その直後に解散したんだなあ)。当時関東の大学に通っていた兄たちがレコードを持っていて、一緒に歌っていたのではなかったか。高校に入って安物のガットギターを手にして、初めはフォークルの歌などをギターをかき鳴らして歌っていたが、ちょっと難しい奏法をやりたくなって、PP&M のスコアを買って練習したのを覚えている。当時は原音のまま楽譜が載っていたので、だいぶ経ってから " Blowin' In The Wind " は3カポのDなんだと気付いたりしたw  学園祭でも演ったが、覚えているのは "Sometime Lovin " (しぶい選曲!)。

数ある彼らのヒット曲の中であえてこの曲を取り上げたのは、メンバーのピーターが共作したものだということがある。彼らのクレジットになっている曲も多くはトラディショナルのアレンジだと思われるからだ(解散前のアルバム " Peter, Paul and Mommy " やリユニオン後はオリジナルも多いが)。あくまでも私の印象なのであしからず。もう一つは反戦の歌や大人の男女の出会いと別れの歌が多い中で異彩を放っている歌だということだ。

歌の内容は、パフという年をとらない魔法の竜と純真な少年ジャッキー・ペイパーが友達になって、一緒に遊ぶというファンタジーだが、そのジャッキーもいつかは大人になり、パフと遊ぶことに飽きて去っていってしまう、という物語で、変わることのできない(純真さを失うことのない)パフはジャッキーとの別れを悲しんで再び洞穴の中に隠れてしまう。
ppm4.jpg
この歌を口ずさむ人はだれでもその年齢に応じて「自分の中からパフは消えてしまっているのだろうか」と自問するのではないか。茨木のり子の『汲む―Y・Yに―』という詩に「年老いても咲きたての薔薇 柔らかく 外にむかってひらかれるのこそ難しい」という一節があるが、いくつになっても柔らかい感受性を失わずにいたい、という願いのようなものが逆説的に語られているのだと思う。この歌はベトナム反戦運動の中で、反戦歌であるとか麻薬が歌われているとか言われたようだが、本人たちも言っているように決してそうではないと私も思う。

プロデューサーによって作られた彼らも、その活動の中で自在な感受性を駆使して、リユニオン後もマリーを失ってからも、PP&M であることを貫いている。その底にはいつでも " Puff " の一節が鳴り響いているように思う。私にとっては今でもFavorite Group であり続けている。
ppm3.jpg

youtube は画像が物語風なこれ。
Peter Paul & Mary - Puff The Magic Dragon
https://www.youtube.com/watch?v=Y7lmAc3LKWM
25th Aniversary Concert のもの。Present tense! という掛け声が泣かせる。
puff the magic dragon (live)
https://www.youtube.com/watch?v=3OiOlnoyljk
こんなアニメが見つかった
Puff The Magic Dragon (1978) FULL FEATURE
https://www.youtube.com/watch?v=0FyhTBvLu4w

パフ (大意。原詩は検索してみてください。)

パフは魔法の竜。海のそばに住んでいた
ハナリー島というところで秋の霞の中戯れ遊んでいた
ジャッキー・ペイパーという少年はいたずらもののパフが大好きで
彼のところにヒモや蝋のシールやいろんな遊び道具を持ってきて遊んでいた

**
パフは魔法の竜、海のそばに住んでいた
ハナリー島というところで秋の霞の中戯れ遊んでいた
パフは魔法の竜、海のそばに住んでいた
ハナリー島というところで秋の霞の中戯れ遊んでいたよ

彼らは一緒に帆をふくらませた舟に乗り旅をした
ジャッキーはパフの巨大な尻尾に乗って見張りをした
高貴な王様やお姫様は会うといつもお辞儀をしてくれるし
海賊どもの舟もパフが一声大声で自分の名を叫ぶと
掲げた旗を下げて敬意を表した

**
竜は永遠に生き続けるが人間の少年はそうはいかない
色を塗った翼や大きなリングはいつか別のおもちゃにとって代わった
ある暗い夜ジャッキー・ペイパーはもう来なくなった
強くて大きいパフももう不敵に吼えるのをやめてしまった

彼は悲しみのあまり頭を垂れ、緑の鱗も雨が降るように落ちていった
パフはもうさくらんぼの小道に遊びに行くこともなくなった
生涯の友を失って、パフはもはや勇猛でいることはできなくなった
強くて大きいパフは悲しげに自分の洞窟にすごすごと入ってしまったよ


ムーヴィング


ベスト・オブP.P&M


nice!(4)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

I Can't Help It[私の好きな20世紀の唄たち]vol.43 [20世紀の歌Ⅱ]

I Can't Help It (If I'm Still In Love With You)
written by Hank Williams

Hank.jpg
ハンク・ウィリアムス(1923 ~ 1953)はカントリーの歴史の中であまりにも偉大な足跡を残しているので、こうやって説明するのもおこがましい気がするが、先日もカントリーとは無縁の知人が「カントリーだったらハンク・ウィリアムスとか演るんですか?」と聞いてきたほど一般にも知られた存在であることは間違いない。ブルーグラスをやっていても " Jambalaya (On the Bayou) " や " I Saw The Light " などは普通にやっているし、" Your Cheatin' Heart " や " Honky Tonkin' " などはスタンダードとして様々なジャンルでとり上げられている。近くではノラ・ジョーンズがファーストアルバムで " Cold, Cold Heart " をJazzy なアレンジで歌っていたのが印象に残ってる。

彼はアラバマ生まれで、若い頃黒人ブルースシンガー Rufus Payne にギターと歌の手ほどきを受けたという。だから彼の作る歌にはブルースが色濃く反映されている。前にとり上げたジミー・ロジャースが亡くなったのが33年だから、若きハンクはジミーからも強く影響を受けて、彼のカントリーブルースを完成させたという見方もできるのかなと思う。

ハンクの歌には " Jambalaya " や " Hey Good Lookin' " のような明るい歌もあるが、 " Your Cheatin' Heart " や " Cold, Cold Heart "" Wedding bells "(この曲は以前ブルーグラスアレンジで演ったことがある) など恋人の裏切りや別れた恋人を思う、といった趣の歌が多い。1949年に " Lovesick Blues " (彼の作ではない)で一躍スターダムにのし上がった彼への周囲の嫉妬や軋轢、持病の二分脊椎症を紛らわせるため酒に溺れたこと、妻ジーンとの関係など彼の実生活が必ずしも幸せなものではなかったからなのかもしれない。
Linda.jpg
今回とり上げた "I Can't Help It " はそういうハンクのウェットな面の曲の一つであるが、昔の恋人もしくは昔好きだった人を街で見かけて、ドキッとするというような体験は誰にでもあることだろうと思う。たとえ追憶の中に埋もれかけていた存在であっても、瞬く間に当時の情景や感覚がよみがえってくるのが不思議だが、そういう誰でも持つている生活のひとコマを切り取って歌にしてみせるのが才能なんだろうな。歌謡曲的と言えるのかもしれないが。
patsy.jpg
訳詞をしながらふと思い浮かんだのが、40年以上前に姉たちがコーラスしていた歌の一節であった。

別れたあなたと 三年たって
街の小さな カフェで
ばったり 逢った
……
どうしてこんなに 胸がときめくの
忘れたはずの 恋人なのに…

よく似た趣の歌だな、と思ったことだよw

youtubeは先ずハンクのもの。歌と映像が合ってないのが笑える。
Hank Williams  live with Drifting Cowboys
https://www.youtube.com/watch?v=ax0Lsl3MvIk
次にリンダのもの。これもエミルーがゴーストのように。
Linda Ronstadt and Emmy Lou Harris
https://www.youtube.com/watch?v=MZbUYS7Qos4
パッツィのはよりJazzyなアレンジだ。
Patsy Cline - I Can't Help It (If I'm Still In Love With You)
https://www.youtube.com/watch?v=OBarGG9cpCs

I Can't Help It (大意。原詩は検索してみてください。)

今日街で君の姿を見かけたよ
ドキッとして心臓が飛び出そうになった
まだ君のことを愛してるんだと思い知らされた
誰か別の人が傍に寄り添っていて
幸せそうに見えた
まだ君への気持ちを断ち切れずにいるみたいだ

昔君といた時の情景がよみがえってきた
肩をぶつけるように寄り添って歩いていた時の…
そして突然あの頃の感覚が膚によみがえってくる
まだ君への気持ちを断ち切れずにいるみたいだ

他の人が君の唇を奪っていると思うと辛くてたまらない
かつて僕たち二人が抱き合ってそうしたように
君と別れたことをこんなに後悔しているって誰が知っている?
今でも君への気持ちを抑えきれないでいるんだ






The Very Best Of [Import]


Heart Like a Wheel


Patsy Cline: The Definitive Collection


nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽
前の20件 | - 20世紀の歌Ⅱ ブログトップ